の良い、追い出すための口実なんじ

 の良い、追い出すための口実なんじゃないですか」

 

…………近藤さんが出陣することを望んだんだ。俺にそれを否定することは出来ない」

 

 

──局長が。

 

 

 それが土方の本心なのだろう。https://blog.goo.ne.jp/debsy/e/2d90c103e867172d289b0bcd13f91f3b https://freelance1.hatenablog.com/entry/2023/11/30/183618 https://ameblo.jp/freelance12/entry-12830708599.html いつだって彼は近藤を優先してきた。唯一無二の友を支えるために生きてきた男である。そうしても何らおかしいことはない。

 

 

「だからって、罠だと分かっていて行くことは無いでしょう……!」

 

「怪我を負ってから、ずっと影で塞ぎ込んできたあの人が、の力で取ってきた戦場だ。甲府に全てを賭けてんだろう。……武士としてために」

 

 

 土方は生きるためだと言ったが、どうにもその寂しい響きはためだとしか聞こえない。

 

 きっと二人の決定なら、誰も文句は言わないのかもしれない。だが、死地と分かっていて行くのは正気の沙汰とは思えなかった。

 

 

「嫌なら、降りても構わない。戦いは男のやるもんだ」

 

 

 その言葉に桜司郎は目を剥く。女は引っ込んでいろと言わんばかりのそれに、急に壁を感じた。同時に冷静になろうと努めていた頭に血が昇る。

 

 

 

「城を枕ににでもする気ですか……!」

 

……それも悪かねえな」

 

 

 売り言葉に買い言葉だった。ここまで来れば意地の張り合いになる。 だが、最終的に折れたのは桜司郎の方だった。今は何を言っても土方には響かないと思ったのだろう。

 

 

……クソッ、」

 

 

 目に薄らと膜を張りながら出て行った姿を脳裏に浮かべながら、土方は悪態を吐いた。

 

 

──の言わんとしていることは分かる。ただ、もう後には引けねえんだ。

 

 

 拳を握り締めたその時、隣の部屋と続く襖が突然開く。そこには唯一無二の友──近藤の姿があった。

 

 

……随分と、派手に言い争っていたなァ」

 

「近藤さん。まだ起きていたのか」

 

 

 部屋の中に入ると、土方の近くへ胡座をかく。何処か寂しそうな、切なそうな表情をしていた。

 

 

「すまないな、俺の我儘で隊を振り回すことになっちまって。しかし、そこまで悪い話しなのだろうか……。俺とて、江戸を火の海にはしたくない。その為の甲府での戦なのだが……

 

 

 その言葉に、土方は首を横に振る。

 

 近藤は近藤なりに日ノ本の行く末を必死に見定めようとしているのだ。元は故郷の江戸や幕府を思う気持ち、武士として生きる心意気が強い男である。ただ、利き腕の故障によって、ほんの少し気持ちが折れかかっていただけだ。

 

 それがこの戦で立ち直せるのなら──

 

 

「悪くはねえさ。何事もやってみなきゃ分からねえこともある。何たって、農民が武士になるなぞ、天地がひっくり返るようなことだって起きたんだぜ」

 

 

 土方は薄く笑みを浮かべた。

 

 

「歳……。有難う。……この戦で功を立てれば、俺は武士としてまだ生きられる……。そうだろう……?」

 

「ああ、そうさ。お前さんが……近藤勇がその気なら、俺は何だってしてみせる。ただ、俺には絶対に嘘は吐かねえでくれよ。今一度確認するが、この戦はの戦なんだな?」

 

……無論だ」

 

 

 短く返答した近藤の瞳を暫く凝視すると、土方は小さく頷く。 一方で、桜司郎は凍るほどに冷たい廊下の真ん中で立ち止まり、漆黒の空を睨み付けていた。

 

 

──今の副長は耳を貸してくれない。でも、あの策は一人じゃ出来ない……

 

 

 他に味方を作る必要があった。信頼が出来、かつ危ない橋を共に渡ってくれる気概を持つ味方が。

 

 

 固く拳を握ると、決意をしたように視線を廊下の先へと移す。脳裏に浮かんだ人物が眠る部屋へと足を進めた。

 

 もはや出立の時は明後日に控えているため、朝が明けるのを待つ余裕は無い。

Comments

Popular posts from this blog

ただ、控えているソル

「そうだ。

をのぞきこんで苦笑する