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Showing posts from July, 2021

無言電話開始か

  無言電話開始から 1 週間、倫子は遂に行動を起こす事にした。   せっかくの産休、お腹の赤ちゃんとのんびり 1 ヶ月の予定だったのに、昼寝も邪魔されて夜に早く寝ようとしても邪魔される。   ふざけんな、冗談じゃない!お腹の赤ちゃんが寝れないと困る。万が一があったらどうしてくれる!赤ちゃんは私が守るんだ!   と言う強い気持ちで動き出す。   時間帯はバラバラ、倫也がいない時、一日に一度か二度、これはもう浮気相手か元カノか、良いわよ、いい態度だわ、妊婦だと思って舐めんなよ!受けて立つ!!   と倫子は心に決めて、先ずは倫也の行動調査をする事にした。   ( スケジュールは聞けば教えてくれるし … 絶対。 )   そこを誤魔化されたら多分、怪しいが、少しでも怪しいと思えば宇佐美に聞けば会社にいるかいないかは直ぐに答え合わせが出来る。     電話機のディスプレイから無言電話の番号を控える。 メモを手にピッ、ピッと操作していくと、番号が違う日があった。   「全部同じじゃない。昨日の午前中、これは最初の日と同じ番号、でも夜は違う番号だ。」   首を捻りながら三つの電話番号をメモして、ネットで登録されている事業所の番号かどうかを検索する。   ( 便利な世の中だ。 )   個人宅であれば検索は無意味だが、登録されている会社の番号であれば会社名が出る。 何処の会社に勤めているかは確認出来る。   勿論、こちらから掛ける事も出来るが、相手が電話に出てしまったら浮気を追求は出来ないし、勧誘電話でしたと謝られてしまったらそこで終わってしまう。   先ずは会社か個人か、ひとつくらいは自宅があるのかもしれない、と思いながら検索をした。   画面を見て倫子はフリーズする。   「 …… もしかしたら、とは思っていたけど … 。」   三つの電話番号の登録事業所は「アクオソリューションズ」、倫也の会社で間違いなかった。   倫也のスマホに直接電話をしていた倫子は、会社の代表番号しか知らない。 代表番号は受付に繋がる物で、そこから内線で繋げてくれる。   考えてみれば 15 階から 17 階に会社が入っていて、衣装部、派遣

「いってらっしゃい

  「いってらっしゃい。」   翌朝、倫子本人は笑顔のつもりだが、思いっきり引き攣った笑顔に倫也は心配な顔を向ける。   「どうかしたのか?具合でも悪いか?」 「えっ?ど、どうもしてないよ?」 「本当に?何か不安な事とかあるなら聞くよ?」 「今?」 「勿論。」   ( だ、駄目でしょ!仕事に行く夫を捕まえて不安を言う妻って … 疲れる人じゃない!! )   「ない!何にもない!!ほら、私は元気だし赤ちゃんも順調だからちゃんと行って!はい、いってらっしゃい!」   今度は普通の笑顔で言うと、そうか、と倫也は気にしながらも出掛けて行った。     「はぁぁぁぁぁぁ …… 本当に浮気だったらどうしよう。許せるか許せないか … 。赤ちゃん産まれたと同時にパパがいない。可哀想過ぎる …… 。」   ブワッと涙が出て来る。   「治ったのに …… もう。」 文句を言いながらリビングに戻り、ティッシュを取り涙を拭いた。   どうしたら良いんだろうと、暫く考えて、一番良いのは倫也に聞く事なんだろうと思うが、疲れる人、それは仕事で帰って来た夫に根掘り葉掘り聞いたりする事も入るんだろうなと思うと、聞けないな、と頭を悩ませた。   ( だいたいさぁ。聞いて、はい、浮気してますとか言う?言わないって!だけどさ、もし浮気なら浮気相手と妻が知らない間に顔を合わせた事になるでしょ?気にならないかな。それとも会っても気付かない馬鹿な嫁だって二人で笑ってんのかな?それは許せないな。 )   大きなため息を吐いて、昨夜あまり寝れなかったから、少し寝ようと寝室に行きベッドに入った。   今だから出来る事のひとつ。 好きな時に寝れる事。   産休に入ったから朝から寝れるし、赤ちゃんがまだお腹だから寝れる。 産まれたら寝不足は決定、それは菜緒を見て知っている。   育児は側で見る機会に恵まれたので、倫子なりに覚悟はしているが実際にやると見るとでは大きく違う事も分かるし、自分の子を一人で見ると思うと不安は大きい。   大丈夫かな、と思いながらウトウトし始めた。     どれ位眠っていたか …… リビングの電話の音で目が覚めた。   「んー電