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「ボーンを送り込んで正解でしたな

  「ボーンを送り込んで正解でしたな。ボーンが見抜かなかったら、太子の軍は王女軍の水攻めの計にり全滅するところでしたな。「そうか。殿下が御無事で何よりであった。しかし、ハンベエは見破られとた気付くや否や拘泥する事なくさっさと兵を引いたのだな。」『声』から両軍の動きの一部始終を聞いたラシャレーは眼を閉じて頻(しき)りに何かを深く思い巡らせている様子であった。「ハンベエという男、やはり武神と呼ばれたフデンの直弟子だけの事はある。並の人間なら折角準備した陣地を弊履の如く棄てるなどの事は為し得ないであろう。それをいとも易々とやってのけるとは・・・・・・。」とラシャレーは呻くように言った。「ベッツギ川で防御戦の一つもせずに撤退したのは正解であると、閣下はお考えなのですな。」「ワシには戦の事は深くは解らぬ。しかし、物事は一旦躓くと次々に綻びを繰り返して、遂には大破れとなるものだ。そんな例は飽きるほど見て来た。ベッツギ川で合戦に移れば殿下にこそ、良い巡り合わせが訪れたに違いないと思うのじゃ。」「そういうものですかな。私には分かりませんな。」「やはり悪い予感がする。胸騒ぎがしてならん。その方に頼みが有る。」「何なりと。」恭しい響きで『声』が答える。「ハンベエに殿下を斬らせないで欲しい。」「・・・・・・。閣下の仰せで御座いますから身命を賭して努力いたしますが、私が死力を尽くしてもハンベエを倒す事は出来ませんな。」それもそのはず、この人物、宰相ラシャレーに仕えるサイレント・キッチン首領の『声』であった。ボルマンスク宮殿の牢獄に収監されている宰相ラシャレーの身辺に仕えているはずのこの人物が何故突如、この場に現れたのか。それはラシャレーの命に外ならない。六日前の事である。『声』はベッツギ川を挟んでの太子軍、王女軍の戦振りを牢獄にいるラシャレーに報告していた。 international school in hk 「ハンベエを倒せとは申しておらぬ。ハンベエが直接殿下に危害を加えねばそれで良いのだ。出来得るなら、ワシの願いとしてハンベエに了承させてくれ。」「果たしてハンベエが応じますかな?」「そこはそれ、同じ風呂好きのヨシミとか、ラシャレー浴場再建の後は生涯無料入浴の特権を与えるとか、色々上手い口説き方をじゃな。」・・・・・・閣下、まさか本気で風呂の話で釣ろうと・・・・・・いやいや、巧言令色少