「……参り、ました」
「 …… 参り、ました」 ガクッと膝をついたのは、桜花だった。 藤堂が振りかぶる姿が視界に入った瞬間、未来にて酷く打ち据えられた記憶が過ぎる。瞬く間に恐怖の念に支配されたと同時にその面に衝撃が走った。 沖田に続いて藤堂にも負けたことに落胆の色を濃くする。 ── どうして、勝てないの。 魚尾紋 成因 弱い私なんて、価値が無くなってしまうのに。 呆然と座り込む桜花の元へ、藤堂が駆け寄ってきた。 「鈴木、試合ありがとう!思ったより強くて驚いたよ」 差し出された手と共に屈託のない笑みを向けられるが、それすら心に刺さる。 「 …… 此方こそ、有難うございました」 桜花は自らの力で立ち上がると、軽くお辞儀をしてふらふらとした足取りで道場を出た。防具を付けていても、打たれた衝撃は強い。だが、それ以上に己の心の弱さに打ちのめされそうだった。 「 …… あっ」 ふらついた拍子に、階段を踏み外す。落ちると思ったが、いつまで経ってもその衝撃は来ない。 その代わりに、腕を強く引かれた。 相手を見遣れば、斎藤が無表情のまま此方を見下ろしている。桜花が体勢を立て直したのを見やるなり、手を離した。 「あの、有難うございま ── 」 「 …… 何に怯えている?平助に勝てば、面子を潰すとでも思ったか」 礼など不要と言わんばかりに、言葉を遮る。何処か不機嫌さすら感じさせるその物言いに、桜花はいたたまれなくなった。 「違、」 「では何なのだ。あんたの実力はその程度ではあるまい。 …… 最初の攻撃だってそうだ。あの沖田さんの初手を受けた腕前がありながら、避けられぬものでは無かろう」 桜花の心中など知らぬ斎藤は、詰めるよ...